大判例

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東京高等裁判所 昭和51年(う)5123号 判決

被告人 福島梅吉 外三名

〔抄 録〕

被告人伊藤の弁護人の控訴趣意二は、原判示罪となるべき事実第二、業務上横領の事実の一部につき、事実誤認を主張するけれども、これに対する判断をするに先立ち、職権をもって調査すると、原判決は、同被告人は、和光不動産の名で不動産取引業を営んでいたところ、勝本均と共謀のうえ、フジ通商株式会社(以下フジ通商と略称する。)のため買収し、勝本名義で仮登記し、かつ、同社から買受先の白紙委任状、不動産登記済権利証および印鑑証明を預るなどの方法により、フジ通商のため業務上保管中の別紙一覧表記載の畑三筆を、ほしいままに売却して、業務上保管中の物件を横領したとの事実を認定している。

しかしながら、右畑三筆は、いずれも農地であって、都道府県知事の許可がなければ所有権の移転はできないものであるところ、関係証拠、とくに安井貞一の検察管に対する供述調書によれば、売買当事者は、右土地が農地であることを前提として契約し、買主フジ通商は、代金の九割を支払って、売主より勝本名義に仮登記し、将来知事の許可があったとき代金残額を支払うことを約していたことが認められるから、いまだ知事の許可のなかった本件当時、右仮登記がなされ、かつ同社から各買受先の白紙委任状等を預っていたとしても、これをもって同被告人及び勝本が右土地を自己においてフジ通商のため業務上「占有」していたものとは認められない。してみると、同被告人の原判示第二の行為を業務上横領罪に当るものと認定、処断した原判決は、事実を誤認し、ひいて法令の適用を誤ったものであって、その誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかである。そして、原判決は、右の罪を他の罪と刑法四五条前段の併合罪の関係にあるものとして、一個の刑をもって処断しているから、原判決のうち被告人伊藤に関する部分は全部破棄を免れない。

しかしながら、同被告人および勝本均は、本件土地の仮登記名義人として、買主フジ通商の利益に、これを保存管理すべき職責を有するものであるが、その任務に背いてこれを売却処分し、第三者である第一明和の利益を計り、フジ通商に損害を加えたものとして、その行為は背任罪を構成するものと解すべきところ、検察官は、当審において、予備的に背任罪の訴因の追加を請求し、当裁判所はこれを許可したから、右変更された訴因に従って、背任の事実を認定することができる。

(綿引 石橋 藤野)

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